2006年07月17日

7/6Magic of MAGIC「TOWARD FISM2006 FISMに向けて」感想。

遅くなりましたが、日本奇術協会によるMagic of MAGIC「TOWARD FISM2006 FISMに向けて」の感想を書きます。

日時:2006年7月6日(木) 16:00〜
場所:牛込箪笥区民ホール
入場料:3000円

FISMコンテスト出演者の最終調整の舞台ということで、マジックのオリンピックとも言われる国際舞台にふさわしいステージを期待して見ました。
また、1月に「チャレンジFISM2006」というステージを見ているので、そこからどれだけ改善しているのかという期待も持ちながら見ました。

全体として長丁場でしたが、コンテスタントだけでなくプロフェッショナルな演技も見れ、おおむね満足でした。
コンテスタントの方の演技では、1月から大きく改善されている姿が見れてうれしかったです。

しかしごく一部に、マジックへの愛情も誇りも感じられない演技があったことが残念でなりません。

●荒井 稔さん
カードマニピュレーション。

1月に見た舞台より、構成もコンテスト向けに派手に改善され、マニピュレーションはだいぶこなれてきた印象を受けた。
最後の女性の登場は派手で、コンテスト受けするのではないか。

全体にテンポが悪く、緩急がない。そのためそれぞれの現象も印象に残りにくく、もったいないと思う。ゆっくりした動きでは体の姿勢の良し悪しが問われるので、もっと気を配って欲しい。
衣装が似合っていない。衣装は上質のものを使っているように見えるし、それを着たい気持ちもわかるが、そうであれば似合って見せられる努力をすべきだと思う。髪型や眼鏡などは比較的すぐに変更できるはずだが、工夫しているようにはあまり見えない。
絵札3枚の現象がいかにもとってつけた感じが強い。なぜ3枚使うのか?なぜテーブル上に置くのか?どちらも最後に女性を出現させたいから、というだけの理由しかないのだったら無駄なので絵札3枚の手順自体を省いたほうが良いと思う。
オープニングに使うシルクがしわしわでみっともない。ネタの都合があるのはわかるが、スタイリッシュな演技を目指すなら気を配って欲しい。

●五十嵐 笑子さん
花と鳩のアクト。

道具や衣装を、淡い色使いで統一しているようなこだわりは良いと思う。

1月に見た演技と印象はさほどかわらなかった。
現象が流れてしまう印象を受けた。ゆっくりな動きなので、緩急にもっと気を配る必要があると思う。
全体に表情が硬い気がする。基本的な技術はできていると思うので、もっと自分の作り出した世界に感情移入するように努めれば自然な柔らかい笑顔になるのではないか。
最後の花束の増加は、何が起こったのか分かりづらい感じを受けた。道具だけでなく、体をつかって増えた感じを表現できると、より改善されるのではないか。

●アキラさん
バーをシチュエーションにしたアクト。

1月に見た演技と印象はさほどかわらなかった。
何を見せたいのかはっきりしない。一言でタイトルをつけるとしたら、何とつけるか、考えてみてほしい。
フレアバーテニングはもっと軽々しく見せないと、効果にならないと思う。

●Ro Byeong-Wookさん
恋する少女の花嫁さんになる夢をテーマにしたステージ。四つ球、衣装チェンジなど。

やりたいイメージがはっきりしていて、そのイメージをとても気に入っている様子がよく表現されていて、楽しく見ることができた。最後のブーケの演出は、粋でよいと思う。

トリックをするときと、感情表現を主体にした芝居っぽい動きとの間に差を感じた。トリック主体の動きも、感情の移り変わりとその表現をもっと意識して見直すとより良くなると思う。
机の上につかわない道具がいろいろ並んでいるのは、乱雑な印象が強く不思議さや鮮やかさを損ねてしまい、あまり効果につながっていないように感じた。化粧台のようなイメージを表現したいのだと思うが、少ない道具でもそれぞれのデザインを絞り込むことで表現する方向のほうが望ましいのではないか。
観客に手拍子を要求するシーンでは、ちゃんと曲にあわせて欲しい。

●岡井 泰彦さん
カードとジャンボコインのマニピュレーション。

静かな雰囲気が良く作り上げられていたと思う。ゆっくりな動きでは流れてしまいがちな動作もきちんと表現できているように見えた。
手先とそのしぐさを美しく見せることをよく研究しているように見え、きれいに見えた。
マニピュレーションは安定していて、ジャンボコインとカードとの変化現象は不思議に見えた。
あえて派手な要素を削る選択は、なかなかできることではないと思うので応援したい。

目指す美しさを実現するには、体の姿勢の美しさがまだ足りないと思う。手先の美しさの研究と同じように追求してもらいたい。バリバリなマニピュレーションにありがちな、動きの面白さや爽快感や不思議さのような派手な要素をあえて使わない選択をしているので、基本的な鍛錬に相当高いレベルを課さないと厳しいのではないか。
目線が泳ぐシーンが観客へのアピール前などに何度か感じられ、気になった。
観客へのアピールはもっと抑えたほうが、静かな雰囲気を淡々と見せる演出にはあっているように思う。

●葉月 美香さん
ベリーダンス風(?)の衣装による、四つ球、フィンガーライトなど。

衣装は、自身の資質を引き立たせるようによく研究されているように見えた。

マジックをする必然性がわからない。どの手順もオーソドックスな見せ方なのでマジックを使って表現したいことも伝わってこず、オーソドックスな解決方法なのでマジック自体へのこだわりも伝わってこなかった。
美意識が安っぽく見えて、好みではなかった。衣装、音楽、動きが作り出そうとしている雰囲気と、演技者の満面の笑顔が似合っているように思えない。満面の笑顔を見せることで、観客にどんなサービスを提供しようとしているのか、考えてほしい。

●マジック 千秋さん
羽根の出現,浮遊、シルクのアクト、衣装チェンジ。

ロープを使った羽根の浮遊現象は不思議に見えた。

アシスタントの訓練不足で悪目立ちしていた。ステージに立てるレベルに達していないと思う。
演者の衣装、使う道具、アシスタントの衣装が互いにミスマッチで、違和感を感じた。

●ブラボー 中谷さん
コメディ調のイリュージョンパロディ。

マジックへの愛情にあふれた、演者とアシスタントのキャラクターが伝わってくる楽しい時間だった。
マジック好きであればほとんどの人が見たことがあるであろう人体交換、檻の中の女性消失などのイリュージョンのパロディはマジック好きの観客へのサービスにもなっており、コンテストのような場でのどのようなウケを狙っているのかがはっきりしていて良いと思う。また各現象のクライマックスには、衣装チェンジなどのマジックの知識がない人にもわかりやすい不思議現象が含まれていて、全ての観客へのサービスが考えられているように感じられ、好感を持った。

笑いのセンスが万人向けとは言い難い面はあると思う。中にはひとつくらい、オーソドックスなマジックの演技が含まれたほうが、笑いの部分と互いに引き立てられ、より多くの観客へのサービスにもなって、より良くなるのではないか。

●KYOKOさん
美容院を題材にしたアクト。

1月に見た舞台とアウトラインは同じだが、細かい手順はだいぶボリュームアップしており、トリック的な工夫も増えているように見えた。ラストも大きくかわっており、拍手しやすい構成にはなったように思う。
現象のアピールはしっかりしており、細かい現象も鮮やかに見えるシーンが多かった。

観客へのアピールが強すぎて鼻についた。もっとマジック自体を見せたほうが、結果的には演者の印象は強く残ると思う。
美容院の不条理な設定は、1月に見たときよりむしろ難解になっており、好ましくないと思う。設定の説得力と演者の感情的な裏付けをきちんと作りこんだほうが、より良い演技になると思う。

●前田 真孝さん
グラスプロダクション、四つ球。

グラスをチンと鳴らす所作は面白いと思った。

1月に見た演技と印象はさほどかわらなかった。
手順に変化が少なく、単調に見える。おそらくトリック的にはいくつかの方法を使っているのだと思うが、印象が変わらないので損だと思う。
取り出す道具をグラスに統一している印象を受けたが、その意図がはっきりしない。特に統一する意図が強くないのであれば、グラス以外の道具を検討してみてもよいのではないか。

●江澤 ゆう子さん
和物をモチーフにしたアクト。

1月に見た舞台と手順は同じに見えた。また、前回感じられた情熱的な雰囲気が感じられず、精彩を欠いた。前回のステージでは最も楽しめた演技だっただけに残念だった。

●里 一磨さん
プロジェクターを使ったステージ。四つ球、CD、カードのマニピュレーション。

1月に見た舞台に比べ、鼻につく自己アピールがだいぶ減り、見せたいのであろう美意識が見えてくるようになったように思う。
アップテンポのシーンは面白く見れた。
今までのマジシャンが取り組んでいないカッコ良さを表現しようとしている姿勢は応援したい。

観客に伝えたいイメージがまだはっきりしていないように思う。ボールについては、光の玉のようなイメージがあるように思うのだが、CD,カードについてはあまり伝わってこなかった。
現象の間で、素の動きになっているところが目に付き、もったいない。幻想的な美しさを見せたいのだと思うが、ステージ上で一瞬でも現実くささを感じさせてしまうと、観客はすぐに現実に引き戻されてしまい、イメージに入っていきにくくなってしまうと思う。もっと細かく気を配ってほしい。
スクリーン上の影と3人で動くシーンは面白いのだが、その後からの流れが尻つぼみしてしまう印象を受けた。3人の動きが作り出す面白さを、一人の演者で作り上げるには、肉体表現の技能をもっと磨かないと難しいように思う。むしろエンディング少し前に再度スクリーン上の影との共演シーンを入れ、エンディング直前に一人になるような表現にすれば、尻つぼみ的な印象も少なく、静かに終わっていくイメージも維持できるのではないか。
CD,カードのマニピュレーションは暗くてほとんど見えなかった。照明の操作ミスだったのだろうか。

●西村 峰龍さん
画家をモチーフにしたステージ。

1月に見た舞台に比べ、現象で何を見せたいのかがよくわかるようになり、衣装も工夫して登場してすぐに何がモチーフになっているのかがわかるようになっていた。
体の向きを頻繁に変えたり、指先をひらひら動かす印象はほとんどなくなり、良くなったと思う。

最後の現象の終止感が少なくて、流れてしまう感じがした。派手な現象を用意するよりも、まずは体の表現でうまく終止感が出せるように研究してみるのが良いのではないか。
ステージの上手下手に無駄に動いている印象を受けた。

●愛花さん
和物プロダクション。

手の中からの火の出現や華やかな和傘の出現など、派手な演出が多く、サービス精神を感じた。

和服を衣装にしているが、和服の体の動きになっていない。和服の美の世界を見せるつもりであれば、日本舞踊の基礎くらいは身につけて欲しい。単なるコスチュームとして使うのであれば、マジックのコスチュームとしての効果をもっと考えてデザインを見直したほうが良いと思う。
道具の扱い方が粗雑。それぞれの道具は実際には安物かもしれないが、ステージ上では演者が高級品のように扱えば高級品に見せられると思う。
火の出現を多用しすぎていて、かえって効果が薄れているように思う。

●ミステラさん
アクションショー的なステージ。

マジックのもつ不条理さを上手く活かしたステージで楽しく見れた。マンガ的な世界観や、くだらないことを真剣にやってしまう姿勢は個人的に好きなので、大笑いしてしまった。

設定が曖昧な点が目に付く。ミスマッチの面白さを狙っているのだと思うが、そうであるほどミスマッチ部分以外の作りこみの完成度が求められると思う。この武器は本来どのように使うことを想定して設計されたものなのか。武器をリンキングすると、戦闘上どんなメリットがあるのか。二人の武器がリンキングしてしまうのはアクシデントなのか、どちらかが意図的にやったことなのかなど。
エンディングでの雰囲気の切り替え方を研究してほしい。きちんとした舞台のエンディングを見れば、音楽を変える、マスクを取る、コスチュームを戻すなどの工夫はすぐに考え付くと思う。
二人はなぜ戦っているのか、戦いに勝つことで主人公は何を得たのか、などの物語性が表現されると、より豊かなステージになると思う。期待したい。

●古山 光さん
リンキングリング、シルクのアクト。

最初のリングのパートは、シンプルな道具と現象が、すっきりとした動きに似合っていて良かったと思う。

6月に見た舞台と同じ演技で、感想もほぼ同じ。
前半の静かなパートでの観客へのアピールがやはり強いように思う。パートごとにアピール時の笑顔の表情を調整すると改善されるように思う。前半の静かな雰囲気のときにはそこまで感情が盛り上がっていないように見えるのに、満面の笑顔をしているように見えるので不釣合いな印象を与えるのではないか。

●戸崎 拓也さん
ハートマークをモチーフに、恋にうかれる青年をテーマにしたステージ。

やりたいイメージがはっきりしていて、そのイメージをとても気に入っている様子がよく表現されていて、楽しく見ることができた。
演じているキャラクターと衣装や道具などがよく似合っているように感じ、好感を持った。

何を観客にプレゼントするつもりなのかがあまり自覚されていないように感じる。いろいろな要素がバランスよくまとまっているとは思うが、そのかわり印象に残る何かに欠けるとも言われかねないのではないか。マジックへの情熱は感じられるが、演じている物語やキャラクターは特別魅力的なものでもないし、トリックやスライトに抜きん出たオリジナリティや熟練を感じられるわけでもない。最も観客に感じて欲しいことは何なのか、考えてみて欲しい。
肩をすくめる動作など、細かなしぐさがややうるさい印象を受けた。何らかの効果を狙っているのだとしたら、もっと伝わるように研究してほしい。もし日常の動きのクセがそのまま出ているのであれば、一度きちんと見直したほうが良いと思う。

●藤本 明義さん
タバコ、シンブル、CD、などのマニピュレーション。

タバコ、シンブルの手順は不思議で鮮やかでテンポが良くて楽しく見れた。
口に道具を入れる演技は不快に感じることが多いが、髪形,衣装などで表現されたキテレツなキャラクターでうまく対処しているように見えた。

個々の演技は面白くよくまとまっていると思うのだが、全体として印象に残らない感じがする。ひとつでよいので、飛びぬけた何かを見たい。
リップシンクが微妙に合っていなくて、ちょっとイライラした。せっかくならもっとキッチリ合わせて欲しい。

●瞳 ナナさん
和物プロダクション。

マジックに対しても、舞台上で扱っている和服などの美術に対しても敬意や情熱が感じられず、とても残念だった。和物を使えば外人ウケするだろう、衣装チェンジや大きくて派手なプロダクションなどしておけば客ウケするだろう、といったような安易な考えで構成されているように見えた。
そのような姿勢でも仕事として成り立つのが今のマジック業界の現実なのかもしれないが、国際的な大会に日本の代表として参加するような舞台に立ってほしくない。

●ブラック 嶋田さん
タバコのアクト。

芸人の魅力たっぷりで、楽しく見れた。久しぶりにバニッシュの技法で本当に消えて見える演技を見たように思う。
同じような現象の繰り返しで、同じようなキメポーズであっても、きちんと練り上げられていれば気持ちよく拍手できるのだと再確認できた。

小さくなるカードで、ポンチョの中でもぞもぞする印象が強いのはマイナスだと思う。

●カズ・カタヤマさん、ゆみさん
各演技者の前にMC。演技者の紹介から、コンベンションの話、昔話など、演技者が多くて疲れがちの観客の興味を維持させるようにいろいろな話題で上手く場を盛り上げてくれていた。


posted by こりん at 17:26| Comment(2) | TrackBack(0) | イベント・ショー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして。色々たどってるうちにやってきました。(*^-^*)

各人の演技の善し悪しレビュー、なかなか的確で読んでいて面白かったです。

ただやっぱり、参加者が削られてこの日の出演者の3分の1しかFISMに出られなくなったのが残念ですよね。
日本勢にいっぱい活躍して欲しかったです。
Posted by サリ at 2006年07月18日 18:10
>サリさん
全員参加できないのは本当に残念ですね。

さらに、今回の演技を見る限りではもっとも出場にふさわしくないと思える方が参加者に選ばれていることが、悲しくてなりません。先着順というのは、情報の早い身内に有利な方法で、公平とは言い難いやり方のように思えます。
今回はもう難しいのかもしれませんが、次回以降は選考方法も含めてきちんと見直して欲しいと思います。
Posted by こりん at 2006年07月20日 00:41
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