2006年01月28日

チャレンジFISM2006の感想。

チャレンジFISM2006の個々の演技の感想を書きます。遅れて到着してしまったので一部の演技は観れませんでした。
チャレンジFISM2006


FISMという3年に一度の国際大会に日本代表として参加する若いチャレンジャー達が有料で開催するショー、FISMというのはテレビでたまに放映されているようなレベルの大会、審査基準は知らないけれどコンテスト挑戦者だから技量はプロほどではなくてもマジックにかける情熱なら誰にも負けないというような演技なんだろうな、という期待値で観ました。

感想が少々辛口になってしまったのは、審査基準を理解していないため演技者の狙いをはかり損ねている点もきっとあると思います。自身はもちろん身近にもコンテストに参加したことの無いような人間はこんなことを感じたのか、くらいに読んでいただければと思います。

全体として\1000なら満足だけど\2000では不満な内容でした。マジックに対する情熱を一番期待していたんですが、その期待をかなえてくれる人ばかりでなかったのが残念でした。

●古山光さん
未見。

●能勢裕里江さん
途中から拝見。90cm角くらいのシルクのアクト、四つ球など。

この日見た中でいちばん鮮やかなステージだった。他の場でもまた見たい。
道具の扱いがとても美しく、特に大きなシルクの扱い方が印象的だった。シルクを振る、ねじる、などのそれぞれの動きを見ているだけでいい気持ちになれるというのは嬉しい体験だった。
四つ球も現象が鮮やかで印象的だった。最初に1個から4個になるところが特にきれいで好き。
衣装は黒のスッキリしたデザインで、道具との対比もよく、演技の雰囲気とも合っていたと思う。

シルクが原色のキツい色合だったのは全体の雰囲気に合わないように思った。もう少し落ち着いた色合いにするか、むしろ思い切って白一色に統一するなどしてもよいのではないか。
捨て籠に入れたシルクの色合いが強く、舞台全体のスッキリした印象のうえではマイナスだと思う。
シルクの部分は動きの美しさは印象に残っているのだが、何が起こっているのかあまり把握できなかった(慌てて入ってきた直後に見た演技だったせいかもしれない)。ただ不思議さを強調するよりは、いまの美しさを強調するようにしたほうが個人的には好き。
四つ球の基本色がオレンジ色だったのは、肌の色に近く現象の鮮やかさが損なわれてしまうと思う。

●荒井稔さん
カードマニピュレーション、四つ球など。

イントロのシルクからファンカードへの変化(シルクは消失)は鮮やかだった。
指が長く見えてマニピュレーションの印象がきれいだった。

衣装と音楽と演者と現象の印象がちぐはぐな感じを受け、どんな種類のカッコ良さを感じてほしいのかがよくわからなかった。
多くの日本人の体型とルックスとでキレイ系にクラシック系の音楽を使って燕尾服を着こなすためには、人に見られるための修練が必要だと思う。
現象、特にその示しのポーズはそれぞれ参考にした演技のものをそのまま使っているのだろうかと思えて、各パートで落ち着いた雰囲気だったり、元気な雰囲気だったりと統一感が無い感じがした。

●アキラさん
バーでのできごとをテーマにしたアクト。

なにを表現しようとしているのかほとんどわからなかった。特にパントマイムは舞台にかけられるレベルに達していないと思う。やるならきちんと勉強してほしい。

●峰龍さん
画家をテーマにしたアクト。筆や絵の具のアクト、四つ球など。

頻繁に体の向きを変えている印象と、指先をひらひらと動かしている印象がうるさく、どちらも見ていて疲れた。おそらく前者はネタの角度の制約から、後者は空であることの示しからきているのだと思うが、クセになってしまって無意識にしているのではないかと思う。本当に必要な部分だけに削ったほうが見やすくなって良いと思う。
白い道具は単体では見た目に鮮やかだが、白い大きなキャンバスの前で扱うと見づらいので舞台上の配置を再検討したほうがよいと思う。

●江沢ゆう子さん
和物をモチーフにしたアクト。

この日見た中でいちばん楽しく情熱的なステージだった。他の場でもまた見たい。
華やかなものが好き、和物の雰囲気が好きという情熱がとても伝わってきた。体の動きも表情からも演じることの楽しさとステージを精一杯つとめようとする力を感じた。
また獅子舞や火消しまといなどのアイテムも、国際大会でのコンテスト審査員へのアピールという側面もあるのだと思うが、お客さんに楽しんでもらいたいという気持ちが感じられた。

楽しいステージだったが、楽しいマジックだったかと言われると疑問だと思う。例えばマツケンサンバはマジックを使わなくても類似の世界を作っている。この世界観を表現するためにはマジック以外の手法は考えられない、というものが何かあれば素晴らしいマジックになると思う。
イントロの登場の瞬間は、後半の華やかで一生懸命な感じをもう少し見せてあげたほうが良いのではないかと思う。キッチュな衣装なので、演技者が現れた瞬間に「自分の容姿を冷静に見れていない派手すぎる衣装を着た人」なのかと感じてしまい、損だと思った。たとえばラメの吹雪を撒き散らすくらいのことをすれば、観客も世界観に素直に入っていけると思う。
全体の構成は途中で水の減らない杯のような静かな雰囲気があり、最後は盛り上がる形でよかったと思うが、せっかくなら最後はもっとハデにしてもよいと思う。火消しまといからラメの蜘蛛の糸とか、紙ふぶきとかの派手な仕掛けがあったらもっと盛り上がるのではないか。あの世界観とキャラクターだったらやりすぎということにはならないと思う。
衣装のモコモコ感と袖が大きい印象があること、なんとなく後ろでモゾモゾしている感があるので、出現や衣装チェンジが鮮やかに見えないのは残念。

●五十嵐笑子さん
花とハトのアクト。

最後に花束の花がゆっくり増えていく部分は、不思議で、やわらかい印象が全体に合っていてよかった。

世界観の突き詰め方が不十分に感じ、表現している世界にひき込まれるほどの力を感じなかった。着ているのはなぜそのドレス?出現するのはなぜ小鳥ではなくて銀鳩?出現する花はなぜ白い小さいものでなく大ぶりのもの?このような質問をしたときに明確な答えがこないような感じがする。
もともと個人的に若草物語的な雰囲気は好きではないので点が辛いかもしれないが、テレビ放映されたFISM2003のYUMIさんの演技は、似た世界観であっても楽しく見れた。大部分の観客は、見る前はたとえ好きでないと思っていても、演技を見た後はその世界の美しさを認めざるをえないくらいの圧倒的なものをエンターティンメントに期待していると思う。
ドレスの色合いと使う道具の色合いがぶつかり合っていて、なにが起きているのかわかりにくかった。たしか下田結花さんが「マジシャンの衣装は道具を持ったときに完成されるべきだ」と話されていたと聞いたことがあるが、その観点で見直したほうが良いと思う。また衣装のモコモコ感はマジックにはマイナスだと思う。
音楽が曲調などを無視してぶった切られているように感じられた。

●トリットさん
バーをモチーフにしたアクト。ワイングラスプロダクション、四つ球など。

グラスをチンと鳴らす所作は面白いと思った。

頻繁に体の向きを変えている印象が残り、見ていて疲れた。
全体的に特徴が感じられない。なにを表現したいのかのイメージがはっきりしていないのではないか。なぜバーなのか?なぜグラスなのか?なぜ燕尾服なのか?とにかく好きだから、という理由でもかまわないので、それぞれに明確な理由があったほうが良いと思う。今回の演技からはどれも理由が見えず、それが特徴のなさに感じられるのではないかと思う。

●KYOKOさん
美容院でのできごとをテーマにしたアクト。クシのプロダクションなど。

体の動きができていてテンポがよいのでストレス無く見れた。クシのプロダクションの動きは、いわゆる学生マジックっぽくないウォンド的な表現で面白かったし、不思議に見えた。

観客への媚が鼻につき楽しめなかった。せっかく体の動きを美しく見せる修練を積んでいるのに、むしろそれが逆効果になりかねずとてももったいないと思う。演者個人ではなくマジックを演じる演者の魅力を見せてほしい。
見終わった観客にどう感じてほしいのかがよくわからない。例えばなぜドライヤーにトラブルが発生したシーンを観客に見せたいのか?あのトラブルが発生したことで美容院に来たお客に対して美容師の役である演者はどう感じたのか?観客にはどの立場に感情移入してほしいのか?
そのような理由が演技のそれぞれで明確でなく、しかし表現はしっかりしているので、演技のための演技という印象が強く残った。コンテストなのだからそれでいいのかもしれないが、感情的な裏付けがあったほうが審査員を含めて多くの観客を魅了する内容になると思う。

●キャサリンさん
扇子プロダクション。

この日見た中でいちばん不思議を楽しめるステージだった。他の場でもまた見たい。
衣装と道具の配色が原色に近い色が多いのにきちんと調和して美しい。
動きのテンポがよく、観客の期待をうまくひろってくれて盛り上げてくれたように感じた。特に扇子をポンと投げ上げる動作が小気味良くて好き。
マニア視点でプロダクションものを見ると"どうせどこかから引きずり出してくるんだろう感"がどこかにあるが、扇子の連続プロダクションではそんな白けた感覚を忘れさせてくれる鮮やかさがあったと思う。両手のパーム分出したからそろそろ終わりだよな、と思ってもまだ出てくる、どんどん出てくる。それが単調な繰り返しにならず気持ちよく見せられているのがとても良いと思う。

後ろを向いてもぞもぞ感がところどころ感じられるので、それが減るともっと鮮やかに見えるのではないか。
最後の巨大扇子出現はコンテスト向けとしてはインパクトがあって良いのかもしれないが、普通サイズ、大きいサイズ、想像してないほど大きいサイズ、というくらいの段階で出現させたほうが見ている側に期待を持たせつつ気持ちよく裏切るマジックでしか表現できない楽しさを表現できるのではないだろうか。

●里一磨さん
プロジェクターやブレイキングダンスを取り入れたアクト。

プロジェクターやブラックライトの発想は面白いと思った。
ファンカードが完全に消えたように見えた部分は初めて見たので不思議だった。

観客になにを伝えたいのかがはっきりせず、どちらかというと自己顕示が鼻について楽しめなかった。それぞれの要素には面白いものがあったと思うが、演技全体にメリハリがなく印象に残っていない。
プロジェクターなど新しい表現手段を導入したこと自体は、コンテストとしては評価されることなのかもしれない。しかしマジックを見慣れていない人からすれば新しいかどうかはわからない。エンターティンメントとしては表現されている内容が魅力的かどうかが最も重要だと思う。
今回のステージでは魅力以前に何を表現したいのかもはっきりと感じられなかった。プロジェクターやブラックライトというふたつの表現で共通する表現したいテーマはなにか?これらを見て観客にどう感じてほしいのか?
なぜブレイキングダンスという不自然さを強調する動きを取り入れたいのか?現象の不思議さを見せたいのなら現象以外は普通なほうが不思議さが際立つと思うし、不自然な世界観を見せたいのであれば現象や音楽や衣装からもそれが伝わってくるような見せ方が必要だと思うし、ブレイキングダンスそれ自体の面白さを伝えたいのであればまだ舞台にかけられるレベルではないと思う。
衣装はあまり似合っているように思えなかった。白いジャケットとジーンズだと上半身が膨張して見えて、足が短く不恰好に見えてしまうと思う。
拍手を要求するしぐさは、観客が賞賛したくなる気持ちになっているときには効果的だと思うが、そうでないときは印象を悪くすると思うので特に演技序盤では控えたほうがよいと思う。観客は自分たちに楽しいものをプレゼントしようと一生懸命な人には拍手を惜しまないと思う。もっと観客を信用してあげてほしい。

●全体の進行
MCのカズ・カタヤマさんの落ち着きっぷりとサービス精神に感心した。内輪ウケ的なネタを、そのネタを知らない観客にも疎外感を感じさせないようにこなせるのはすごい。

演技の間に客電を少し上げてBGMをかけるのは、観客へのサービス精神の感じられる良い方法だと思った。

客席前方にスライハンドの演技に対してとても猛烈に拍手をするお客さんがいて、その場違いなまでの拍手っぷりには笑ったが、拍手から感じられるスライハンドへの情熱にはちょっと感動した。あのお客さんがもしパフォーマンスもする人なら演技を、他の表現をする人ならその作品を一度見てみたいと思った。

そしてそんな情熱をステージよりも客席から感じてしまったことがちょっと寂しかった。


posted by こりん at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | イベント・ショー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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